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昼祭 - パレード

具体的な理由もなく、早く大人になりたいと思っていた。

大人になると、なんとなく歳をとりたくないと思うようになった。

なんの仕事だったか忘れたが、初出勤を終えた帰り。

バイクにまたがり信号待ちをしていた。

目の前に広がる直線の大通り、遠く見えない左方向からド派手な音が聞こえる。

右翼団体の宣伝カーかなにかだと最初は思った。

僕が小さなころは実家付近で演歌調の爆音を鳴らして走り去る車をよく見たが、最近は目にすることもあまりなくなった。なんだか懐かしく感じる。

信号が変わる。左折した。

このまま直進すれば、近づく音といずれ交差する。宣伝カーとすれ違うだろう。

ところが直進していてフッ、と音が途切れた。

(どこかで曲がったんだろうか?)

そう思ったものの、曲がれる道なんてそうそうないところだ。

またしても信号で足止めを食らった時、ふと買い忘れに気づいた。

迷惑そうなクラクションの音をその背に感じながら、無理くりUターンして今きた道を引き返す。

ドンドンパッ! ドンドンパッ!

遠い直進方向、先ほど聞いたド派手な音が現在の進行方向、つまり先ほどと逆側から聞こえてくる。

よく耳を澄ましてみれば、それはまるで某夢の国で流れていそうな……合唱団が演奏するパレード音のように聞こえた。

(なにかのイベント? こんなところで? 平日の夕方に……?)

そう思っていると進んだ先、またも信号に捕まる。

季節は寒波が押し寄せる真冬だったと思う。

バイクのハンドルを握って信号を見つめる僕の目に、異様な光景が飛び込んで来た。

十字に広がる大きな交差点、僕から見て左側から猛スピードでパレード車が到着した。

僕の目の前で急激に速度を落としたそれは、アメリカンスクールの送迎用に使われるような大きな黄色いバス。

二階部分に人々が立ち並び、手を振りトロンボーンのようなものを吹いている。

お城の入り口を守る衛兵のような格好……細長い羽付き軍帽のようなものを被った人で溢れていた。

ハァ……ッ!?

小さくそう声を漏らした僕と目が合った一人が身を乗り出し、満面の笑みで顔の前にかざした両手をこちらへ向け目一杯に振る。

呆気にとられていると、それまで両手を後ろで組んでいた一人がポケットからなにやら取り出し車上から投げるようにバラ撒き出した。

真冬の交差点に、ヒラヒラと舞う鮮やかな桃色に気を取られ目で追う。

パァーーーー!!

突如として鳴り響いたクラクションに振り向き、前を見直すと信号は青。

パレード車も跡形なく消えていた。



(錯覚? 白昼夢? なんらかの病気なんじゃ……?)

思い巡らせ、買い物も済ませて自宅へ着いていた。

バイクから降りてアゴ紐を解き、ヘルメットを脱ぐ。

ヘルメットの中、小さな桜の花びらが一枚。押しつぶされたようにへばりついていた。

(桜……? こんな冬に?)

その花びらをつまんで無意味に辺りを見回してみたが、なにも見つかるはずはない。

あのパレード音も、当然もう聞こえない。

確かになんとなく歳をとりたくないと思うようにはなっている……

ただ、それはピーターパン症候群のそれとはまた意味合いが違う。

街中で見た不可解なパレードがなにを意味するのかサッパリだ。

僕自身が僕に見せた幻覚なら、小さなころあまり遊園地やなにかに連れて行ってもらえなかった憧れからだろうか?

ああいう派手なものに、深層で憧れているのだろうか……桜の花びらは捨てた。

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