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策謀 - U.F.Oの作り方

勤め先だったとある店で、閉店後にゴミをまとめていた。

出入り口に備えつけてある大きなゴミ箱から、ビニール袋を引き上げる。口をしばって、すぐそばにあるゴミ捨て場に投げ入れていた。

気配を感じて振り返ると、若い男性が一人立っている。ワカメみたいな頭だ。

なにやら言いたげにゴミ箱を遠慮がちに指さし、口を少しばかり開いているように見える。

(ああ、ゴミを入れたいのか)

そう思った矢先、ワカメの兄ちゃんはこう言う。

「あ、あの。空き缶もらってもいいですか……」

ゴミ箱のすぐ近くには飲料の自動販売機が設置されていて、その横に空き缶入れもある。

少し戸惑って兄ちゃんをよく見るが、浮浪者風情ではない。

シャツに半パン、バックパック。どこか優男で大学生風にも見える。

ーー空き缶ですか?

欲しいのなら持っていってくれて一向に構わないが、散らかされると困る。

「あの、350のアルミ缶の……これ、コーラのやつとかが欲しいんです」

丸口を空けた空き缶入れを指さし、そこから顔を覗かせるコーラの空き缶をしきりに指さす。

ーーアルミの空き缶を……

空き缶入れの上部をパカリと開けると、大量の空き缶が所狭しとすし詰め状態だった。

兄ちゃんの顔が輝いた、ように思えた。

「これとか、これとか……あと、これ」

ーーべつにいいですよ。

僕のその言葉に、兄ちゃんは嬉しそうにお礼を言うと早速飛びついた。

空き缶などなにに使うのか? 少し不思議だったが、なにか工作でもするのかな、と考えた。

なにかボーイスカウト的なものにでも入っていて、小学生と一緒にイカダでも作る材料を探していたのかも知れない。

まだ、飲み残しがしたたる空き缶を気にもせず、ポイポイとバッグへ詰め込む兄ちゃんを傍観していた。

開いたバッグからは、カップ焼きそばの空き容器のようなものも見え隠れしている。

ーーイカダでも作られるんですか?

僕の問いかけに兄ちゃんは一瞥をくれて、

「ロケット作るんですよ。(ここには空き缶が)一杯あるからやっと作れる……」

ああ、やっぱり工作か。思って僕はシャッターのしまった店内へ引っ込んだ。



小一時間、経ったころだろうか。数人の同僚と一緒に店を出た僕は、足早に帰宅する同僚を見送り一服していた。

もう兄ちゃんの姿はない。

350のアルミ缶にこだわっていたが、なにか理由でもあるんだろうか? 考えていて、昔、図工の時間が好きだったことを思い出す。

「ピチョ」

帰ろうとバイクにキーを差し込んだとき。ふいに額に冷たいなにかが落ちた。

まさか鳥の糞じゃなかろうかと指の腹で反射的にぬぐいとる。が、ベタベタしているだけでそれがなにか正体が知れない。

指はそのままに空を見上げるが、星も見えない真夜中は黒々としてなにもなくーー

どうせ家に帰れば風呂に入る。まあ、いいかとバイクにまたがった。

「ポチョ、ポチョッ」

ハンドルを握ったばかりの腕に今度は二滴。一体、なんだろうかと思ったが、さすがに舐めて確かめる勇気はない。

顔を近づけて匂いを嗅いだ。

どこか甘ったるいそれは、結局、なんなのか分からなかった。

少しばかり空を睨みつけ、首を傾げた僕はエンジン音とともに帰路を歩んだ。



家に着き、バイクを停めたところでふと思う。

まさかとは思う。思うが……

先ほど空から落ちてきた水滴が、清涼飲料水の飲み残しだとしたら……?

「ロケット作るんですよ」

兄ちゃんの言葉が頭を過る。

ペットボトルロケットなら分かるが、アルミ缶でロケット……?

これじゃまるでSFだ。宇宙船が壊れて帰れなくなった宇宙人が、修理の材料を求めて地上を彷徨いやっとの思いで帰れたとでもいうのか。

バカに近くに思える月を見上げて……ロマンもクソもない。

せっかく助けて上げたのだから、飲み残しをふりまき恩を仇で返すのは止めていただきたい。

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