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周金 - めぐりめぐる

お天道様が、これでもかと照りつけるある真夏。

灰になりそうな身体を引きずり、わざわざ電車を乗り継ぎ、向かった先にロクなことがないことは分かっていた。

「誰も来てくれない、助けてくれ!」

そりゃあ、誰も来ないだろうという内容の電話だった。

「今いくら持ってる?」

から始まり、

「このままだと殺される! 頼む!」

で、終わる内容にノコノコ行くのなんか僕ぐらいのものだ。

相手は、しばらく疎遠だったモギという男。

百害あって一利なし。

こういうときしか「お前しかいない」と言ってもらえない悲しい人間は、それでも悲しい行動をする。



グレーゾーン金利だ、過払い請求だと叫ばれる数年前。闇金は表立ってノサばっていたし、サラ金は主婦にも平気で貸しつけていた。

年利も初回申込で29.4%程度が相場。その当時に契約した人は、法律が変わってもその利率で返済しなければならない。

バックが銀行だからといって甘く見てはいけない。責権は売り飛ばされ、取り立てがやって来る。

と、いっても初回は正座させられ、説教くらって、そこいら中に電話させられるぐらいのものだったが。



モギのアパートへ着いてノックすると案の定、いかちいオッサンがお出迎えしてくれた。

同業者と勘違いされる面倒な一幕あって、部屋の奥へと通される。

「お友達が来てくれたよ。よかったな」

モギは、パンイチで正座させられていた。リアルでこんな状況、初めて見たわ。

脱がすコトになんの意味があるのか知らないが、とりあえずモギのその月の最低返済金額だけを立て替え、オッサンたちにはお引取り願った。

いいものを見させてもらったので、帰ろうとした。時代が時代なら拡散希望な状況。

「俺は今ここで死ぬ!」

モギが、わけの分からないことを言い出した。

死ぬぐらいなら弁護士にでも相談しろといったが、親や彼女に迷惑をかけたくないので首を吊るという。

余計、迷惑かかるわ。僕はすでに迷惑こうむってる。

多額の借金を抱えると最後は身内を毒牙にさらすか、変なプライドとともに人生上がるかどちからかだ。

弁護士や警察に中々相談できずにいることが本当に多い。そうなってしまう。

ーーお気張りやす

それだけ言って僕はアパートをあとにした。



数ヵ月後、モギからメールが入った。

「借金片ついた。あのときはご迷惑おかけしました」

親に泣きついたのか、どこかの窓口に相談したのか聞いたが、どれも違うと言う。

返信を打っている最中に電話が掛かってきた。

あのときの金を返すから銀行口座を教えてくれというモギに、それはもういいからなぜ借金が片付いたのかたずねた。

「夢見て。死んだばあちゃんに連れられて歩く夢」

もう誰もいない、モギのおばあさんが住んでいた家の庭の一角を、おばあさんがしきりに指差すという。

三日連続でその夢を見たものだから、藁にもすがる思いで三時間かけてそこまで歩いて行ったそうだ。

ここ掘れワンワン。掘り返せば、金塊でも出てきたというのか?

「ばあちゃんの遺品が出てきた。時計やら宝石やら……家族も知らんかったし、俺宛に手紙も入ってた」

ーーなんて?

「残してやれる遺産はこれだけやと……困ったら使いなさいって」

受話器越しのモギに嘘は感じられなかった。

「ばあちゃん昔金貸しやってたらしい……そのときの担保に取った品だから気にするな、って書いてた」

それでもにわかには信じがたい話に、それはよかったなと電話を切った。

その話が本当だとすれば、何十年も前に人に貸しつけた金の担保に取った品で孫の借金を弁済してやったわけだ。粋な計らいに感心せざるを得ない。

金は天下のなんとやらは正にこのこと。借りるは仏、返すは鬼。女手一つ金貸しやろうなんて、強烈なバアさんは、業の整理のつけ方というか……そういったものの心得があったのやもしれない。

数日後、どこで調べたのか僕の自宅に現金書留であのときの金が返ってきた。

キッチリ立て替えた分だけだったが……

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